犬のリンパ腫
体の中のリンパ球が腫瘍(がん)になってしまったものがリンパ腫です。6~8 歳くらいの中高齢に多く発症します。犬の腫瘍中では発生率が高く、犬の腫瘍全体の 7~24%を占めています。リンパ腫は全身をめぐる血液の細胞である白血球ががん化するため、体のほぼすべての組織に発生する可能性があります。その発生する場所の違いにより症状や治療に対する反応、予後(治療後の経過)が異なる場合があるため、発生場所によりいくつかの型に分類されます。犬にできるリンパ腫の約 80%が体のリンパ節の複数が腫れる多中心型と呼ばれるタイプです。その他に、縦隔型(胸腺型)、消化器型、皮膚型、節外型があります。
診断
全身の視診と触診によりリンパ節の大きさ、硬さ、形、周囲組織との関連性などを調べます。進行度(臨床ステージ)、全身状態の把握のため、血液検査やX線検査、超音波検査を行い、必要に応じて内視鏡検査や骨髄検査、リンパ球クローナリティー検査(遺伝子検査)なども行います。以上の検査において異常を認めたリンパ節や臓器に対しては細胞診あるいは病理組織検査を行い、診断を確定します。
臨床ステージ分類 | |
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ステージ1 | 単一のリンパ節および単一臓器のリンパ組織に限局 |
ステージ2 | 領域内の複数のリンパ節に浸潤(扁桃を含むまたは含まない) |
ステージ3 | 全身性リンパ節浸潤を認める |
ステージ4 | 肝臓および/または脾臓に浸潤(ステージ3を含むまたは含まない) |
ステージ5 | 血液症候の発現と骨髄および/または他の臓器へ浸潤を認める(ステージ1~4を含むまたは含まない) |
治療
リンパ腫は全身性の病気であり、化学療法(抗がん剤)が主体となります。リンパ腫の治療は根治(完治)目的ではなく、緩和目的になります。リンパ腫によって起こる悪影響、全身症状を改善して、リンパ腫と付き合いながら、できる限り生活の質を維持していくことが目標です。基本的には数種類の抗がん剤を組み合わせ、計画された投与間隔で治療を行います。抗がん剤の副作用には胃腸障害(嘔吐・下痢)、骨髄抑制(免疫力の低下)、脱毛があります。適切なケアを行う事で副作用は最小限に抑える事が可能です。
予後
化学療法を行った場合、約半数の犬が 1 年後も生存しており、約 20%の犬が 2 年後も生存しています。予後因子には、サブステージ、免疫学的分類、臨床ステージ、高カルシウム血症の有無、治療への反応性などがあります。