心臓腫瘍

心臓腫瘍は、臨床症状はないことが多く、生前診断は難しいとされています。健康診断や術前のX線検査、心臓の超音波検査で偶発的に発見されるケースが多いです。超音波検査で腫瘤が見つかった場合以下の腫瘍が考えられます。

心基底部腫瘍:ケモデクトーマ、異所性甲状腺癌

心臓腫瘍:血管肉腫

血管肉腫

犬に発生する心臓腫瘍全体の約7割を占めます。心臓原発の血管肉腫は右心耳または右心房に好発し、心膜腔側に突出して拡大するのが一般的ですが、右心房内腔へ突出したり、心基部など他の領域を巻き込みながら拡大することもあります。悪性度が極めて高く、肺、肝臓、脾臓および腎臓などに高率に転移します。ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバーに好発するとされています。

症状

元気食欲の低下、体重減少、発咳、呼吸困難、不整脈、急性の虚脱や心タンポナーデによるうっ血性右心不全などの他、腫瘤破裂による急性失血で急死することもあります。

診断

胸部X線検査で心臓腫瘤を検出することは困難ですが、心嚢水貯留や右心拡大が見られることがあります。心臓超音波検査で心嚢水、右心耳あるいは右心房の腫瘤を確認します。心嚢水の細胞診で血管肉腫が確定診断できることは稀ですが、心臓に対する生検はリスクが高いために、腫瘤の発生部位、大きさ、転移病巣の有無などを総合的に評価し血管肉腫を疑いながら治療します。

治療

心タンポナーデにより血圧低下などの重篤な症状を呈している場合は、心膜穿刺により心嚢水を抜去しますが、症状の緩和は一時的です。心嚢膜切除術を実施することもあります。診断時に明らかな転移病巣がなく、右心耳に腫瘍が限局している場合は腫瘍の外科的切除をすることがあります。

心臓腫瘍

予後

外科的切除のみでの中央生存期間は約2ヶ月、外科的切除後に化学療法を併用することで生存期間が約6ヶ月に延長したと報告されています。

主な腫瘍疾患