フィラリア症は、簡単に言うと

  • 蚊に刺されることによって伝染する寄生虫の病気
  • 適切に予防すれば、ほぼ100%感染を防ぐことができる
  • 感染してしまうと、治療が大変

…な犬と猫の病気です。

フィラリア症は、蚊が運ぶ「犬糸状虫」という虫が原因の病気です。
この虫は、犬の心臓や肺の血管に住み着くことで、血液の流れを妨げたり、臓器に負担をかけたりします。

進行すると…

  • 呼吸が苦しくなる
  • 運動ができなくなる
  • 突然倒れることもある

とても怖い病気です。

治療が難しい

一度虫が心臓や肺に定着すると、治療に長い時間を要するうえ、リスクも高いです。そのため、「予防する」ことが一番大切になります

ほぼ100%予防可能

予防薬を定期的に適切に与えることで、ほとんどの犬はフィラリア症を防ぐことが出来ます。

  1. 犬から蚊へ
    • 感染犬の血液にはミクロフィラリア(小さな虫)が含まれる
    • 蚊がその血を吸うと、ミクロフィラリアも体内に取り込まれる
  2. 蚊の中で虫が成長
    • 気温が14℃以上になると、蚊の体内で虫が成長
    • 約10日で感染能力を持つ
  3. 蚊から別の犬へ
    • 感染した蚊が他の犬を刺すと、虫が犬に入り込む
    • 4~6カ月で成虫になり、心臓や肺の血管に定着

初めのうちは…

  • 普段通り元気に見えることが多い
  • 軽い咳や、運動が苦手になることも

症状がはっきり出るのは、虫がかなり増えてしまってから(数年後のことも)。

進行すると…

  • 呼吸が苦しくなる、咳が止まらない
  • 運動中に息切れしやすい
  • お腹が膨らんだり、元気がなくなる
  • 急に倒れる、ショック状態になることも

血液検査

抗原検査: 血液中にフィラリアの成虫がいるかを調べます。
※感染してから7か月未満は、正しく検出できない場合もあります。

直接検査: 顕微鏡で血液中の虫を確認しますが、初期だと見逃す可能性もあります。

画像検査

胸部X線画像検査:肺や心臓の大きさ、形、血管の状態を調べます。

心臓エコー検査:超音波で心臓や肺の血管の中に虫がいないか確認します

フィラリア症は、体内で虫が成長する前に駆除することがポイントです。予防薬は、犬の体内に入った虫が成長して心臓に到達する前に、毎月飲む(または塗る・注射する)薬です。

予防薬の種類

経口薬(粉薬・錠剤・チュアブル錠)

  • 毎月1回、飲ませる
  • チュアブル錠は嗜好性が高く、食べやすい

スポットオン(滴下タイプ)

  • 皮膚に直接塗布
  • 経口薬が難しい犬に適している
  • まれに皮膚に刺激が出ることもあります。

注射薬

  • 年に1回、病院で注射するタイプです。
  • 投薬を忘れにくいというメリットがありますが、アレルギー反応が出る可能性もあるため、獣医師と相談の上、接種しましょう。

予防のスケジュール

滋賀県内では、蚊が活動し始める春の5月から、蚊が活動しなくなった冬の12月までが予防の期間です。

目安としては、平均気温が14℃を上回るようになってから1カ月後に投与開始し、14℃を下回ってから1カ月後に最後の投与となります。

※近年、温暖化の影響で投与期間が長くなってきています。

滋賀県の月ごとの平均気温(単位:℃)

すでに虫がいる犬に予防薬を与えると…
体内で虫が急に死んで血管を詰まらせる可能性があり、ショック状態やアレルギー反応を起こす危険があります。

そのため、予防を始める前や定期的に、血液検査でフィラリアがいないか確認することが大切です。

治療は非常に難しく、長い時間を要することが多いです。

主な治療方法

薬物治療

  • 駆虫薬: 成虫を殺す薬ですが、一度に多くの虫が死ぬと血管が詰まる危険があるため、感染量が少ない場合に使われます。
  • slow-kill法:薬を長期間にわたって少しずつ与え、徐々に虫を減らしていく方法です。治療期間は12か月以上かかることもあり、定期的な検査が必要です。

外科治療

  • 昔は虫を直接取り出す手術も行われましたが、現在はあまり実施されません。

治療の難しさ

  • 早い段階なら治療できることもありますが、進行してしまうと、心臓や肺にダメージが残り、完全に治すのは難しくなります。
  • そのため、【感染しないこと】が最も重要です。

その他の注意事項

室内飼いでも注意

犬が家の中にいるだけでも、散歩中や窓から入ってくる蚊で感染することがあります。
そのため、屋内飼いの犬でも予防は必要です。

正規の薬を使いましょう

フィラリア予防薬は、必ず獣医さんの診察と検査を経て処方される薬です。
ネットや不正な方法で手に入れると、品質や安全性に問題がある場合があります。

投薬の管理をしっかりと

カレンダーやスマホのリマインダーを使って、毎月の投薬を忘れないようにしましょう。

犬のフィラリア症は、蚊を媒介とする虫が原因の非常に危険な病気です。

しかし、「予防前の検査」「毎月の定期投薬」をしっかり行えば、ほぼ100%防ぐことができます。

  • 予防薬は、犬の体内に入ったフィラリアの幼虫が成虫になる前に駆除するものです。
  • 一度感染してしまうと治療には長い時間がかかり、とても困難であるため、適切に予防することが大切です。

愛犬の健康を守るためにも、正しい予防プランを実践しましょう!